人権剥奪期間
☆☆☆

6日目の夜。


あたしたち2人は信じられないほどによく走りまわった。


廊下でばったり遭遇した先生は始めは威勢がよかったものの、ハンマーを振りかざすとすぐに降参した。


だけどあたしたちは容赦しなかった。


こっちはもう4人も殺されたんだ。


その怒りが火をつけていた。


ハンマーで先生を殴りつけるたびに、怒りの炎は燃え上がる。


今この学校内にいる全員を殺してしまわないと収まらないくらいの怒りだ。


でも……。


「榊先生?」


廊下で様子を伺っていた聡介が弱弱しい声で呟いた。


あたしは驚いて振り向く。


廊下の中央付近に立っていたのは、保険の榊先生だったのだ。


榊先生は両腕を後ろに回し、血に濡れたあたしたちを見て悲しそうに表情をゆがめた。


「ごめんね守ってあげられなくて」


先生は涙を浮かべながら近づいてくる。


聡介が一瞬身構えた。


「先生……どうしてここに?」


「どうしてって、あなたたちのことが気になったからに決まってるでしょう?」


あたしと聡介は目を見交わせた。


榊先生はあたしたちを保健室にかくまってくれた人だ。


自然と、ハンマーを持つ手の力が緩む。


「ここ数日間保健室を使った形跡もないから、心配したのよ」


「ごめんなさい。同じ場所にとどまっているのは危険かと思ったので」


あたしがそう言うと榊先生は微笑んだ。


「そうなのね。懸命な判断だと思う。でも……」


榊先生は大きく息を吸い込み、そして微笑んだ。


次の瞬間、聡介があたしの体を突き飛ばしていた。


同時に榊先生が後ろ手に隠し持っていたチェンソーを取り出し、寸前まであたしが立っていた場所へ向けて振り下ろした。
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