人権剥奪期間
「逃げろ!!」


聡介の怒号が聞こえてきて、強引に腕を引かれて立ち上がり、駆け出す。


すべてが一瞬の出来事だった。


なにが起こったのかわからなかった。


「保健室を使わせて6人まとめて切り刻んでやろうと思ったのによぉ!」


豹変した榊先生が唾を撒き散らして怒鳴る。


チェンソーがうなりをあげてあたしたちを追いかけてくる。


なに?


いったいなにが起こってるの?


あれがあの優しい保健室の先生だなんて到底思えなかった。


「お前ら商品だろうが! おとなしく殺されろ!」


必死で階段を駆け下りる。


後ろからついてくるのは本当に人間なのだろうか。


榊先生の顔は鬼のように変形し、ゆがみ、悪意が滲み出している。


「くそっ追いつかれる!」


チャンソーの音が真後ろに迫ってきていた。


今振り向いて速度が落ちれば完全に殺される……!


全身から血の気が引いていき今にも倒れてしまいそうなのに、足だけは前に進む。


もう少しで1階にたどり着く!


どこかの教室に逃げ込まないと……!


そう思った直後だった。
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