人権剥奪期間
聡介が一瞬足を止め、体を横へ向けたのだ。


そして右足を伸ばす。


「恵美、よけろ!」


えっと思った次の瞬間榊先生が聡介の足に引っかかって体のバランスを崩していた。


あたしは咄嗟に階段の壁に身を寄せた。


「ギャアアア!」


先生は悲鳴を上げて階段を落下していく。


手放したチェンソーがクルクルと回転し、1階の廊下まで落ちた先生の体に突き刺さった。


チェンソーが先生の背中を切り裂き、周囲に血肉が飛び散る。


「うっ……!」


あたしは口を押さえて目をそらせた。


「逃げよう!」


聡介に手を握られ、あたしは階段を駆け上がったのだった。
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