人権剥奪期間
「来るなってば!」


叫ぶ聡介に微笑みかける。


「来たんだから、聡介を解放して」


まだ姿の見えない誰かへ向かって行った瞬間、頭から黒い布をかぶせられた。


咄嗟のことで逃げ切れず、そのまま床に横倒しに倒れこんだ。


相手は廊下であたしが来るのを待っていたようだ。


後ろから襲ってくるなんて卑怯だ。


そう思いながらも安堵している自分がいた。


相手があたしを攻撃している間は、聡介は無事だからだ。


人権剥奪期間が終わるまであと2時間と少し。


このまま、相手の注意がこちらへ向いていればいい。


「恵美!」


聡介の悲鳴のような聞こえた次の瞬間、右頬を激しい衝撃が走った。


布ごしに殴られたのだ。


相手は男性教師らしく、一発殴られるだけで頭がクラクラした。


こんな先生に捕まった聡介もひとたまりもなかっただろう。


続けて2発3発と殴られて意識が飛びそうになる。


聡介が鎖をはずそうともがいている音が聞こえてきた。


「その程度で終わり?」


あたしは相手を挑発するように言った。


まだまだあたしと遊んでもらわないと困る。


せめて、聡介が逃げ出すまでの時間は稼がないといけない。
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