人権剥奪期間
あたしの挑発に乗った先生が今度は腹部を殴りつけていた。


激しい痛みに悶絶する。


体をくの字に曲げようとしたが、それすら許されない。


痛みを和らげるすべもなく、なすがままだ。


思いっきり横腹を蹴られたとき、一瞬意識が遠のいた。


あぁ、このまま死ぬのかな。


あと数時間で終わりだったのに、残念だな。


何度殴られても痛みを感じなくなったときだった。


教室内で空気が動くのを感じた。


ハッとして意識が戻ってくる。


聡介が鎖をはずせたんだと思った。


しかし次の瞬間「なんだお前は」という先生の声が聞こえてきたのだ。


なに?


なにが起こっているのかわからないまま、ガンッ!という音が聞こえてきた。


それから聞こえてきたのは激しい呼吸音だった。


すすり泣きの声も混ざっている。


だけどそれは男のものではなく、あたしは驚いて被せられていた布を取った。


そこにあったのは予想外の光景だった。


あたしの横に倒れているのは校長先生だ。


頭から血を流している。


聡介は呆然として立ち尽くしている。


そしてもうひとり……ハンマーを片手に持って泣いているのはエリナだ。


「エリナどうして?」


質問してもエリナはただ泣きじゃくっている。


そして時計の針は夜の12時を指した。


あたしたちの人権剥奪期間は終了をつげたのだった……。
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