人権剥奪期間
「それなら、2人で逃げよう!」


聡介の言葉に思わずうなづいてしまいそうになる。


2人で逃げることができればどれだけ良かったか。


あたしはうつむいて左右に首を振る。


「できない」


「なんでだよ!? 2人でなら逃げられるだろ?」


その言葉に、聡介はまだ警告音の存在を知らないのだとわかった。


「実はね……」


あたしは大きく息を吸い込んで今朝の出来事を話して聞かせた。


話を聞いている間、聡介はどんどん青ざめていく。


最後には脱力したように壁にもたれかかり、大きく息を吐き出した。


「俺たちは逃げ道はないってことか」


あたしは頷く。


想像していた以上に厳しい現実がそこにあるのだ。


どうすればいいのか考える暇もなく、ホームルームの開始を告げるチャイムが鳴り始めたのだった。
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