人権剥奪期間
「なにこれ……」


まだ現実を受け入れることができなくて、あたしは呟く。


「今は休憩時間中だから俺たちを狙えるんじゃないのか」


聡介が緊張した声色で言う。


あたしたちを、狙える……?


「休憩時間中に教室にいたら、誰に何をされるかわからない」


「で、でも。そんな急に変わるなんて――」


あたしたちは昨日まで普通のクラスメートだったんだ。


そんな相手が豹変するとは思えなくて言う。


しかし、鍵をかけたドアはまだノックされ続けている。


「女を出せ!」


「本当に殺すぞ!」


普段学校内で聞くことのない汚い言葉が飛び交っている。


あたしは最後まで言葉をつむぐことができなくて絶句した。


「あたしたち、本当に殺されるの?」


ずるずるとしゃがみこんで言う。


聡介はあたしの隣に座って体を抱きしめてくれた。


「わからない。でも、可能性はあると思う」


「そんな……」


「授業が始まったら、また教室に戻らないといけない」


「む、無理だよそんなの!」


ホームルームが終わった段階ですでに男子生徒たちは動き出した。


次の休憩時間になると本当につかまってしまうかもしれない。
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