人権剥奪期間
「なにか考えないといけない。日常と同じ行動を取りながら、逃げ切る方法を」


「そんな方法あるの!?」


そういっている間にも、短い休憩時間はどんどん少なくなっていく。


「相手だって授業中は手出しできないんだ。それなら、休憩時間だけ逃げ切れることができればいい。昼休憩は長いけど、後は15分だけだ。そう考えればどうにかなりそうじゃないか」


あたしは聡介の言葉に頷けなかった。


学校までの行き帰りや、家にいる時間も危険にさらされた状態だということに代わりはない。


その時、授業開始のチャイムが鳴り始めた。


廊下にいた男子たちが舌打ちをしつつ教室へ戻っていく足音がする。


聡介が立ち上がり、ドアを開けた。


その後ろから付いて廊下へ出ると、みんな教室に戻った後だった。


ホッと胸をなでおろしてB組へ向かう。


「恵美の席は廊下に近いから、次の休憩時間に入ったらすぐに廊下に逃げるんだ」


「聡介はどうするの?」


「俺もすぐに逃げる。さっきの空き教室で合流だ」


聡介の言葉にあたしは頷くしかなかった。


うまくいくかどうかわからないけれど、とにかく逃げるしかない。


あたしは大きく息を吸い込んでB組の教室へ入ったのだった。
< 25 / 182 >

この作品をシェア

pagetop