人権剥奪期間
どうにか問題を解き終わってチョークを起き、自分の席へ戻ろうとしたときだった。


「今回の商品はなかなかレベルが高いな」


そんな呟きが聞こえてきてあたしはハッと振り向いた。


視線の先には腕組みをして立っている数学の男性教師の姿があった。


先生の目の奥で鋭い眼光がギラリと光って見えた。


その瞬間背筋がゾッと寒くなり、慌てて自分の席へ戻った。


忘れるところだった。


人権剥奪期間中に自分たちを攻撃できるのは子供だけじゃない。


大人だって同じだということを。


いくら生徒たちから逃げても、先生に捕まってしまえば結果は同じだ。


最悪の場合、命を落とす……。


授業中、先生の鋭い眼光を思い出して、あたしは何度も身震いをしたのだった。
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