人権剥奪期間
☆☆☆

いつもなら授業時間なんて早く終わってほしいと思う。


だけど今は違った。


いつまでも終わってほしくない。


永遠に授業時間中であってほしいとすら願う。


しかし、そんな願いは誰にも届かない。


秒針は刻一刻と時を刻んでいて、ついに授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いてしまった。


教卓にまだ先生が立っているなら、あたしは反射的に席を立ち、ドアへ向かって走っていた。


先生が「まだ話は終わってないぞ」と声をかけてきたけれど、止まっている暇はない。


ドアの手前まできて手を伸ばした、その瞬間だった。


入り口に一番近い席に座っていた男子生徒が立ち上がり、ドアをふさいだのだ。


伸ばした手が男子生徒によって阻まれる。


後ろの教室から逃げだろうと身を翻したときにはすでに5人の男子たちに取り囲まれてしまっていた。


嘘でしょ!?


青ざめて、足が動かなくなる。


先生が呆れ顔で後ろの教室から出て行くのが見えた。


「待って、先生助けて!」


悲鳴をあげるが、先生は振り向きもしなかった。


それは、あたしが商品だから。


あたしには人権がないから。
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