人権剥奪期間
涙が滲んできたとき、思いのほか大きな悲鳴を上げていた。


誰でもいい。


なんでもいいから助けて!


そんな思いで出した悲鳴は教室を揺るがし、隣のクラスまで難なく届いていた。


「どうしたの!?」


ドアが大きく開いて複数の生徒たちが顔を除かせてくれたのだ。


「た、助けて!!」


必死に叫ぶ。


「なにしてんだよ!」


「お前らどうしたんだよ!」


隣のクラスの男子たちが止めに入ってくれて、あたしを抱きしめていた手の力が緩んだ。


その隙に身をひねり、逃げ出した。


人ごみを掻き分けて必死に廊下に出る。


「逃げたぞ、追いかけろ!」


「あいつは商品なんだ! 余計なことすんな!」


さまざまな慟哭が後ろから聞こえてきたけれど、あたしは一度も振り返ることがなかったのだった。
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