人権剥奪期間
早退
2人してずぶぬれの状態で教室へ入ると、国語の女性教師がすでに教卓に立っていた。


先生はあたしたち2人を見た瞬間目を見開いて驚いたが、なにも言わずに黒板へ体を向けた。


教室のあちこちから笑い声が聞こえてくる。


「なにあれ、悲惨」


「ずぶぬれじゃん。よく教室入ってきたよね」


「汚水じゃねぇよな? きったねー!」


どれもあたしたちを見下し、馬鹿にするような言葉たち。


そんな言葉がいちいち胸に突き刺さるものだから、あたしはわざと大きな音を立てて椅子を引いた。


一瞬だけ教室の中が静かになる。


しかし次の瞬間にはまたさざめきのような話声が聞こえてきた。


まだ1日目だ。


これから先どうなっていくかわからないのに、こんなところで傷ついていちゃいけない。


自分自身にそう言い聞かせて教科書を取り出した。
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