人権剥奪期間
☆☆☆

早退することはあたしたちにとって日常的にあることだ。


毎日というわけではないが、年に2回や3回なら珍しくない。


きっととがめられないはずだ。


その思いであたしたち2人は昇降口へと急いだ。


「早くしないと授業が終わる」


授業が終わるまでまだ30分以上残っていたけれど、気持ちばかりが焦ってそんな風に言葉が出てしまった。


聡介も頷いて靴を履き替えるのももどかしそうだ。


どうにか運動靴に履き替えて外へ向かう。


と、そのときだった。


昇降口を出た瞬間、けたたましい警告音が鳴り始めたのだ。


しかも、2人分。


体内から聞こえてくる警告音に鼓膜が破れそうなほど痛くなる。


その場にうずくまり、両耳をふさいでも効果はなかった。


それでも前へ進もうと足を進めると、更に音は大きくなる。


「くそっ! これじゃ逃げれない!」


大きな音に顔をしかめ、聡介とあたしは校舎へと戻った。


靴を履いたまま廊下に座り込み肩で呼吸を繰り返す。


外の天気は悪くなっていて、体はどんどん冷えてきている。


このままじゃ本当に風邪をひいてしまいそうだ。
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