人権剥奪期間
☆☆☆

生徒の人数が増えた今、どこ学校にも空き教室は少なくなっている。


この学校は3年前に同じ敷地内に新しい校舎を建てたため、まだ余裕があった。


「誰かにバレてもすぐに逃げだすことができる場所がいい」


聡介は小さな声でそう言いながらあたしの前を歩いてくれた。


右にも左にも廊下が続いていて、行き止まりのない空き教室。


そんな都合のいいものがあるのか、入学して間もないあたしたちにはわからない。


だから自分たちで探すしかなかった。


足音を立てないようにそっと階段を上がり始めたときだった、前方に女子生徒の姿が見えてあたしたちは身を屈めた。


ショートカットの後ろ姿で、顔は見えなかった。


授業中にトイレにでも行ったんだろうか?


でも、トイレは各階にある。


わざわざ階段を使う必要はないはずだ。


おかしいと感じてあたしと聡介は顔を見合わせた。


なにかあるかもしれない。


もしかしたら、商品であるあたしたちを探しているとか?


嫌な予感がよぎったとき、不意に女子生徒が立ち止まって辺りを見回し始めたのだ。


隠れようとしたけれどここは階段だ。


階段を降りるしか道は残されていない。


後ずさりをするように階段を降りようとした瞬間、女子生徒と視線がぶつかった。
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