人権剥奪期間
悲鳴を上げてしまいそうになり、慌てて両手で自分も口をふさいだ。


女子生徒もこちらと同じように驚いている。


「逃げろ!」


聡介が言うと同時に身を翻して階段を折り始めた。


「待って!」


女子生徒がそんなことを言っても止まるわけにはいかなかった。


ここで止まったらどうなるか。


考えるだけで背筋が凍りつく。


絶対に足を止めちゃいけない。


そう、思ったのに……。


「B組の2人でしょう?」


そう言われて、足が止まってしまっていた。


ぎこちなく振り返ると女子生徒が一歩一歩こちらへ近づいてくる。


聡介があたしの前に立ちはだかり、両手を横に伸ばした。


「警戒しないで。あたしは1年C組の尾上舞(オガミ マイ)」


尾上舞。


どこかで聞いたことのある名前だった。


1年生だというから、どこかで聞いたことがあってもおかしくない。


でも、だからって油断はできなかった。


同じクラスの子たちでもあんなに簡単に豹変したのだから。


「あなたたちも商品に選ばれたんでしょう?」


その言葉に聡介の肩がビクリと震えた。


やっぱりこの子もあたしたちが商品だって知ってるんだ!


早く逃げないと!


そう思いながらも彼女の言い周りに違和感があった。


「あなたたちもって、言った?」


聡介の後ろから質問をすると、舞は頷いた。


そして自分の右頬を見せてきたのだ。


そこにはあたしたちと同じように絆創膏が貼られていて、ドキンッと心臓が大きく跳ねた。
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