人権剥奪期間
それからあたしと聡介はそれぞれ自己紹介をした。


念のためにみんなの右頬を確認していくと、確かに数字が書かれているのがわかった。


みんな、仲間なんだ……。


そう思うと少し体の力が抜けてその場に座り込んでしまった。


今朝からずっと気を張ってきたから、やっと安心できた。


「椅子とか、適当に使って座ればいいよ。っていっても俺たちのものじゃないけどさ」


一にそう言われあたしたしはそれぞれ椅子を持ってきてそれに座ることにした。


「昨日まではごく普通の日常だったのにね」


ポツリと呟いたのは舞だった。


舞は視線を床に落として何かを思い出している様子だ。


「友達と普通の遊んで、帰って。だけど目が覚めたらこんな数字が頬に出てきてたの」


舞が自分の右頬に触れる。


あたしもつい同じように自分の頬に触れた。


「あたしに数字が出ているのを見て、家族は急に冷たい態度になったの。商品だから、子供じゃないからって」


その言葉にあたしは目を見開いた。


「そんな言い方って……」


「あたしの家族、兄弟が8人もいるの。今の時代でもすごく多くて、もともとお金に困ってたの。あたしもアルバイトとかしてたんだけど、あまり手伝ってあげられなかったし」


それにしても自分の子供が商品に選ばれたとたん冷たくなるなんてひどい親だと感じてしまう。


そんな親ばかりになると、国の思うがままになってしまう。
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