人権剥奪期間
「2人とも旅行に出てるの。テレビもあまり見ないし、ラジオも聞かない。だから、きっと知らないと思う」


「それ本当か? どこからでも情報は入ってくる時代ですよね?」


不信そうな声色で言ったのは大志だった。


「情報が入ってれば、連絡してくると思うから」


そう言うと花子はスマホを取り出した。


なにか確認した後、「やっぱり、知らないみたい」と、左右に首を振った。


両親からの連絡が入っていなかったということなのだろう。


「両親もいないし、家にいても誰も守ってくれない。だから学校へ来たの。だけど教室には行かずに、ずっとここにいる」


「ずっとって、最初からですか?」


聞くと、花子はうなづいた。


そして話終わったという様子でまた顔をうずめてしまった。


「俺はさすがに両親は知ってた。でもまぁ、俺こんなんだし、なにかされてもやり返せるしって思って学校に来たんだ」


大志が花子の次に話し始めていた。


「だけどさ、ホームルームのときに商品名が紹介されて、その後のクラスメートたちの豹変振りには驚いたよ。まるで別人みたいに襲ってきやがったんだ」


大志はそう言うと腕を見せてきた。


そこは青あざができていて、痛々しい。


「クラスのやつにつかまれて、引き倒されたんだ。さすがに大勢が相手じゃかなわなくて逃げ出したんだ。そうしたら舞とばったり会ってお互いに商品だってわかって、一緒に行動してたんだ。そしたら、トイレに行ってた花子とバッタリ会って、ここに逃げてきたってわけ」
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