人権剥奪期間
みんなが押し黙ってしまったその時、休憩時間開始のチャムが鳴り始めた。


その音は普段よりも大きく聞こえてきて身を縮めた。


「ここにいれば大丈夫。みんなもいるんだし」


聡介があたしの手を握り締めてくれる。


それでも恐怖は静まらなかった。


体が小刻みに震えていて、それを止めることができない。


廊下に聞こえてくる足音は全部自分たちを探しているように聞こえてくるし、生徒たちの笑い声は体を揺るがすほど近くに感じられる。


「おい、商品探ししてみようぜ!」


冗談なのか本気なのかわからない、そんな声まで聞こえてくる。


6人で身を潜め、息を殺して休憩時間が過ぎ去るのをジッと待つ。


それしかあたしたちにできることはなかった。


幸いにもこの教室をマークしている生徒はいないようで、15分の休憩時間を無事に乗り切ることができた。


授業開始のチャイムの音に全身の力が抜けていくのを感じる。


でも、まだまだ油断はできない。


今4時間目の授業が始まったところだから、次は昼休憩になる。


この学校の昼休憩は45分。


昼を食べた後でも十分あたしたちを探す時間があるのだ。


「食べ物はどうするんですか?」


聡介が一に向けて質問した。


そうだった。


ずっとこの教室にこもっていることはできない。


食事はもちろん、トイレにだって行かないといけないのだから。
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