人権剥奪期間
「どっちにしても、ずっとこの教室にいることはできないんだ。食事だって、ちゃんと取らないといざというときに逃げられなくなる」


一が言っていることは理解できる。


だけど、怖くて勇気がでない。


「……俺、一緒に行きます」


そう言って手を上げたのは聡介だった。


あたしは驚いて聡介へ視線を向ける。


「ありがとう。他は誰もいない?」


一に聞かれて、あたしは下唇をかみ締めた。


もしかしたらこのまま聡介と会えなくなってしまうかもしれないと、最悪の事態が脳裏をよぎった。


そんなの嫌だ。


それなら聡介と一緒に行動していたい。


そんな思いが強くなり、あたしはそっと右手を上げた。


「あたしも行きます」
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