人権剥奪期間
「恵美。無理しなくてもいいんだぞ?」


すかさぐ聡介が言う。


だけどあたしは左右に首を振った。


「無理なんてしてない。あたしは聡介と一緒にいたいの」


その言葉にうなづいたのは一だった。


「じゃあ、食料を調達するのはこの3人で行こう。なにかあったら、ここまで全力で走って逃げるんだ」


一の言葉にあたしはゴクリと唾を飲み込んだ。


行き先は1階。


ここは3階だ。


走って逃げ切れるかどうかわからない。


もしかしたら、ここで1度外へ出たらもう戻ってこられないかもしれない。


そこまで考えてあたしは左右に首を振った。


今は最悪の事態を考えるのはやめよう。


とにかく、人数分の食料を準備することだけ考えるんだ。


自分にそう言い聞かせ、大きくうなづいたのだった。
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