人権剥奪期間
それは大人たちが勝手に決めたたわごとだった。


産め増やせといいながら、増えすぎたら間引きする。


子供たちは人権剥奪の恐怖を知って、大人たちに従うようになる。


結局のところ子供たちを自分たちの思うままに動かしたいのだろう。


だからか、ニュース番組では人権を剥奪された子供たちのことを『商品』と呼ぶ。


そうすることで人間ではないのだと、世間に知らしめているのかもしれない。


「次の商品は誰になるのかしらね」


夕飯を食べながらお母さんが呟く。


あたしはカレーを口に運びながら「知らない」と、短く返事をした。


いまや日本は子供だけで1億人に迫る勢いだ。


その中のたった500人が選ばれる。


どうせ自分じゃないことには、興味がない。


「それより、今日のドラマ見させてね? 正文君が出るんだから」


あたしの日常は変わらない。
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