人権剥奪期間
「商品になって顔晒して、あんたを自由にできるんだってことで男子たち大喜びだよ。そんなことまでして注目されたい?」


「まじでキモイんだけど。死んで?」


言われのない言葉が飛び交い、そのたびに体のどこかが激しい痛みを感じた。


殴られ、蹴られているのだと気が付いても抵抗できなかった。


何人、何十人という生徒たちがあたしを取りかこんで見下ろしている。


そのほとんどが傍観者だ。


どれだけ人が傷ついていても知らん顔をして、その様子を眺めて笑っているだけ


「なにしてんだよお前ら! そういうことすんなよ!」


そんな声がして一瞬希望が見えた気がした。


誰だろう。


そんな風にあたしを守ろうとしてくれている人は。


食堂のみんなと同じように、まだあたしたちのことを思ってくれている人がいる。


そう思って顔を上げたそのときだった。


見知らぬ男子生徒の顔が近くにあって悲鳴を上げた。


「こんなボロボロになって。あ~あ、せっかくなら綺麗なままやりたかったのになぁ」


その顔はニヤけていて、あたしを助けようとしたのではないと即座に理解した。


同時に立ち上がって逃げ出そうとしたけれど、蹴られた痛みが残っていてうまくいかない。


伸びてくる手を振り払うのが精一杯だ。


「威勢がよくていいよね。俺そういう子すげー好き」


男子の呼吸がどんどん荒くなって行くのがわかった。


「誰か、助けて!」


声を上げてみても誰も反応しない。


ただ好奇心をむき出しにして眺めている者ばかりだ。
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