人権剥奪期間
「近くで見ると本当に可愛いね」


男子の顔が近づいて来てギュッと目を閉じる。


一は元々自分が逃げ延びるためにあたしを連れて逃げたんだ。


あたしを助けるためなんかじゃない。


こうして生贄にするためだったんだ……!


いまさら理解してももう遅い。


一のことを信用してしまった自分もバカだったのだ。


でも、はじめての相手は聡介がよかったよ……。


「手ぇ出してんじゃねぇよ!!」


そんな怒号が聞こえてきたかと思った次の瞬間、目を開けると男子生徒が横倒しに倒れていた。


その横には聡介の姿。


「聡介?」


驚いて体を起こすとすぐに支えてくれた。


「大丈夫か恵美。なにもされてないか?」


「う、うん」


瞬きをして事態を整理してみると、寸前のところで聡介が駆けつけてくれて、相手の男子を横から蹴り上げたのだとわかった。
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