人権剥奪期間
☆☆☆

それから15分ほど経過して、ようやく昼休憩は終わった。


廊下から聞こえてきていた喧騒は止み、周囲はとても静かだ。


あたしはそっとトイレの個室から出た。


ひとまず誰もいなくて安心するが、今度はまた警戒しながら廊下の様子を確認した。


そこにも誰の姿もない。


「聡介?」


小さな声をかけてみるが、返事は聞こえてこない。


もう1度スマホを確認しても、既読はついていなかった。


嫌な予感が胸をよぎる。


いったいどこに行ったんだろう。


トイレから出て周囲を確認してみるが、やはり聡介の姿は見つからなかった。


きっと、どこかへ逃げることができたんだ。


だからここにはいないんだ。


そう思うことにした。


とにかく一度3階の教室に戻ろう。


他のみんながどうなったのか気になるし、1人で校内に隠れているような勇気はなかった。


あたしは足音を殺して階段を上がっていく。


聞こえてくるのは授業をしている先生の声と、時々椅子や机が動く音だけ。
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