人権剥奪期間
慎重に、一歩一歩進んで行く。


自分の呼吸音すらうるさく感じられる緊張感の中、どうにか3階までたどり着いた。


そして空き教室に入ろうとしたときだった。


3階の廊下に誰かが倒れているのが見えたのだ。


その人の周りには赤い血溜りができていて、鉄の臭いが充満している。


ハッと息を飲んで手で口を塞いだ。


その人物が誰であるのか、一瞬わからないくらいに顔が破損していた。


なにか道具を使って攻撃されたのだろう。


鼻はつぶれて頬は陥没し、目は真っ赤に染まっている。


だけどそれは間違いなく一だった。


右頬に残っている365とい数字。


それは一の番号だと覚えていたから。


「人を生贄にしても、結局やられたんだ……」


一のひどい遺体を目の前にして複雑な心境になった。


仲間はひとり失われてしまったことは悲しい。


だけど一はあたしを突き出した張本人だ。


聡介が助けに来てくれなければ、どうなっていたかわからない。


あたしは下唇をかみ締めて、教室へと戻ったのだった。
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