人権剥奪期間
☆☆☆

空き教室に戻ると大志と花子がいた。


「舞は?」


聞くと、2人は顔を見合わせて左右に首を振った。


どこに行ったのかわからないみたいだ。


あたしはグッタリして壁に背中を預けて座り込んだ。


せっかく持ってきた食料は床に散らばり、おにぎりは踏みつけられている。


それを見ると胸が痛んだ。


あたしたちのために作ってくれたのに、こんなことになってしまうなんて、申し訳なくて仕方ない。


教室の鍵は壊されていないみたいだけれど、相手はすでに鍵を手に入れている。


ここに隠れていても、すぐに捕まってしまうだろう。


「聡介は?」


聞いてきたのは大志だった。


大志も随分格闘したのか、制服がところどころ破けている。


あたしは大志からの質問に左右に首を振った。


「舞も聡介も行方不明か……」


「お願い、聡介を探すのを手伝ってくれない?」


「今から?」


そう言ったのは花子だった。


花子は見たところ傷が増えているようには見えない。


うまく逃げることができたんだろう。


あたしは大きくうなづいた。


「次の休憩に入る前に見つけ出したいの」


「でも、もう死んでるかもしれない」


花子の言葉に心臓がグッと押されたような気分になった。
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