人権剥奪期間
廊下で死んでいた一の姿を思い出す。


「でも、まだ生きてるかもしれない」


あたしは花子を見つめ返してそう言った。


どこにいるのかわからない。


メッセージに既読も付かない。


それでも生きているかもしれないから、探したいと願う。


あたしの考えは間違えていないはずだ。


「そうだな。仲間は多いほうが心強い」


ため息混じりに言って立ちあがったのは大志だった。


あたしは驚いて大志を見つめる。


「協力してくれるの?」


「あぁ。今の時間ならまだ安全だからな。でも、休憩時間になる前には必ずこの教室に戻ってくる。鍵は相手の手の中にあるけど、椅子や机でガードくらいはできるだろ」


大志の言葉に嬉しさがこみ上げてくる。


「ありがとう!」


「あまり大きな声を出さないで」


花子に注意されて慌てて口を閉じる。


「どうして危険な目をしてまで探す必要があるの」


文句を言いながらも花子も同じように立ち上がった。


「一緒に探してくれるの?」


「ここにひとりでいたら危険だから一緒に行くだけ」


花子は抑揚のない声でそう言ったのだった。
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