人権剥奪期間
教室を出たあたしたち3人はま3階のトイレを探してみることにした。


中腰になり、足音を立てないよう細心の注意を払って移動する。


無理な体勢で動いているせいか、蹴られたわき腹がひどく痛んだ。


だけど気にして立ち止まっているような時間はない。


こうしている間にも授業時間はどんどん過ぎて行っているのだから。


「あたしは外で見張ってるから」


という花子を廊下に残してあたしは女子トイレ、大志が男子トイレを確認することになった。


女子トイレのドアはすべて開いていて、人はいない。


小さな窓から下をのぞいてみたけれど、そこにも人影はなかった。


廊下に戻るとちょうど大志も戻ってきたところだった。


「トイレにはいなかった。2階へ行ってみよう」


そう言われてうなづく。


3階の廊下の途中には一の遺体が残っていたが、みんなそれを見てみぬふりをして通り過ぎた。


可哀想だという気持ちもあるけれど、遺体を移動しているような時間はない。


2階に続く階段を下りていったとき、踊り場の隅に誰かがうずくまっているのが見えた。


ハッと息を飲んで立ち止まる。


白い体操着を着たその人物は壁に向かって三角すわりをして、両手で頭を抱えて守っているように見せた。


背中は汚れ、シューズで蹴られた跡がいくつも残っている。


髪の毛はボサボサで引きちぎられた髪の毛がいくつも床に散らばっている。


あたしはそっと近づいた。


体操着が破かれているのがわかった。
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