人権剥奪期間
「聡介?」


話しかける声が震えた。


嘘でしょ。


まさか、そんな……。


返事がないのでその場に膝をついた。


そっと手を伸ばして、肩に触れる。


その瞬間だった。


まるで火がついたように叫び声をあげ始めたのだ。


両手で頭を抱え、なにかから逃げるように身をよじる聡介。


「黙らせろ!」


大志が叫び、あたしは慌てて聡介の体を抱きしめた。


「聡介、あたしだよ。恵美だよ。わかる!?」


それでも聡介は叫び続ける。


目の前にいるあたしのことなんて見えていないかのように、必死でうずくまって身を守っている。


このままじゃ誰かが来てしまう!


授業中だから攻撃されることはないかもしれないが、そんなこと無関係に攻撃してくる連中だっているかもしれない。


とにかくこの法律にまともなルールなんて存在しないのだ。


「聡介!!」


あたしは無理やり聡介の顔を上に向かせた。


そしてその顔を覗き込む。


聡介があたしを見た。


その瞬間目が大きく見開かれ、悲鳴が止まった。
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