人権剥奪期間
「恵美……?」


ようやく目の前にいるのがあたしだと認識した聡介。


しかし、もう時間がない。


休憩時間が始まるまであと3分ほどだ。


「聡介、歩ける?」


聞くが、聡介は返事をしなかった。


よほど恐ろしい目にあったのか、喪失状態であることがわかる。


こんな状態で3階の教室までたどり着くことができるかどうか不安が残る。


随分と怪我もしているみたいだし、できれば聡介の手当てがしたかった。


「1階の保健室に行きませんか?」


一か八かであたしは2人へ向けてそう提案した。


「保健室か。他の生徒がいるかもしれないぞ」


思っていた通り、あまりよくない顔をされた。


「その時は諦めます。3階まで逃げる時間もないから、近くのトイレに逃げます」


そのくらいしか逃げ道はなさそうだ。


「わかった。1階に行けば舞にも会えるかもしれないしな」


大志はそう言い、頷いたのだった。
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