人権剥奪期間
あたしたちは3人で聡介の体を支えながら階段を下りはじめた。


聡介は足も随分怪我しているようで歩くたびに顔をしかめた。


「もう少しだから頑張れる?」


「あぁ、大丈夫」


そう返事をしながらも額には脂汗がにじんできている。


もしかしたら骨折でもしているのかもしれない。


そうなると保健室での手当てだけじゃどうしようもない。


嫌な考えがよぎる中、どうにか保健室の前までやってきた。


電気はついていて、中に誰かがいる気配もある。


「中を確認してくるから、ここで待ってて」


少し離れた場所に聡介を座らせて、あたしは保健室のドアの前に立った。


ドアノブに触れた状態で動きを止め、大きく深呼吸をした。


このドアを開ければ中にいる人物が突然襲ってくるかもしれない。


覚悟を決めないと開くことをができなかった。


「大丈夫だ」


後ろからそう声をかけてきたのは大志だった。


「少ない人数なら俺1人でもどうにかできる」


その言葉に心強さを感じて、少しだけ笑った。


「開けます」


そしてあたしは保健室のドアを大きく開いた……。


その瞬間中にいた白衣を着た女性先生と視線がぶつかった。


あたしと大志の姿を見た瞬間驚いたように目を見開く先生。
< 77 / 182 >

この作品をシェア

pagetop