人権剥奪期間
他には誰の姿もないようだ。


「あなたたち……」


先生が戸惑いがちに椅子から立ち上がり、近づいてきた。


「お願いします先生。怪我を診てください」


なにかを聞かれる前に早口で言い、頭を下げた。


その様子に眉間にシワを寄せつつ、先生は廊下を確認した。


座り込んでいる聡介を見た瞬間、先生の顔色がわかった。


サッと青ざめ、それから真剣な表情になって聡介に近づいて行く。


あたしは大志と目を見交わせた。


あの先生は攻撃してくる心配はなさそうだ。


「立てる? こんな……ひどいわね」


廊下で簡単に聡介の足を確認した先生はため息交じりに言い、大志と2人で聡介を保健室へと移動させて行く。


ベッドに横たえられた聡介の姿は余計に痛々しく見えて、思わず目をそらせてしまった。


「鍵をかけておいてくれる?」


先生に言われて花子が保健室の鍵をかけた。


あたしは窓のカーテンを引く。


これで外からここにあたしたちがいることはバレないはずだ。
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