人権剥奪期間
その数字がなにか、冷静に理解する前に背中に汗が流れていた。


妹はあたしが早起きしたことが嬉しいのか、部屋の中をジャンプしながら走り回っている。


普段は怒るところだけれど、今はそんな場合じゃなかった。


鏡を見ながら右頬に触れる。


数字の上をなでると、またなにかが押し込まれるような感覚がした。


しかし、表面の皮膚にはなんの違和感もない。


体の内側から数字が浮かび上がっているような感じだ。


とたんにゾクリと体が寒くなった。


『月曜日になりました。本日、商品が変わります』


お隣さんから聞こえてきたテレビニュースの声を思い出し、部屋から飛び出した。


妹がはしゃぎながら後ろをついてくる。


あたしはリビングまで走ってテレビをつけた。


見慣れたニュースキャスターが、なんでもないことのように商品が変更されたことを告げていた。


「次の商品って……あたし?」


テレビの前で座り込み、呟く。


全身の力が抜け落ちて行って、立ち上がることができない。


「先週、人権剥奪期間中に亡くなった商品は250名でした」


ついでのようにキャスターが告げて、すぐに次のニュースに移ってしまった。
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