人権剥奪期間
花子はまっすぐに先生を見つめていた。


「本当はそういうことをしちゃいけないんだけど、仕方ないわね」


先生はため息まじりに言う。


「そういうことって、どういうことですか?」


目ざとく質問したのは大志だ。


「その……商品をかくまうようなことっていうのかな。はっきりとそう伝えられているわけじゃないけれど、あまりよくないってことは言われてるの」


そうなんだ……。


そんなこと全然知らなかった。


家にいれば守ってもらえるとも思っていた。


そうさせないために警告音が存在しているのだと。


でも、商品に選ばれなかった側にもなんらかのルールが存在しているみたいだ。


「俺たちをかくまうことで、先生に危険が降りかかることはないんですか?」


「それは大丈夫よ。そこまでは聞いてないから」


大志の質問に先生は早口で答える。


「それならよかった」


あたしは頷いた。


今日はひとまず先生に甘えることができそうだから。


だけどきっと毎日ここにいることはできないのだろう。


そんなことすれば、それこそ先生に危害が加わるかもしれない。


あくまでも今日だけ甘えるのだ。


自分自身にそう言い聞かせた。


ベッドの上の聡介に視線をやると、いつの間にか目を閉じて寝息をたて始めていたのだった。
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