人権剥奪期間
☆☆☆

散々泣いてようやく落ち着いたあたしを連れて大志は舞を探し始めていた。


舞も学校から出られないだろうから、きっと学校内に残っているはずだ。


あたしたちの後ろからは花子もついてきていた。


つい足音を殺してしまいそうになるけれど、今はもう大丈夫なのだと自分に言い聞かせ、背筋を伸ばして歩いた。


ひとつひとつの教室のドアはすべて開いていて、その中には誰もいない。


あたしたちが普通の生活していたときは放課後教室が空になると、すぐに事務員さんが鍵をかけて回っていたから、なんだか不思議な気分だ。


「どうして鍵が開いたままなんだろう」


花子が呟く。


花子もそこが気になっていたようだ。


「俺たちを逃がすため」


大志がポツリと呟いた。


「で?」


どういう意味だろうと思って聞き返すが、大志はそれ以上なにも言わなかった。


それからも教室とひとつひとつ調べて回った。


どこにも舞も姿は見当たらない。


トイレや更衣室も確認していく中、大志が図書室の前で足を止めた。


「ここかもしれない」


なにか直感でもあったのかそう言うとドアを開けた。


図書室の床は絨毯が引かれていて防音効果がある。


その上を歩いて進んで行くと、暗がりの中に誰かの姿を見つけた。
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