人権剥奪期間
一瞬誰だかわからず3人同時に足を止めた。


そして大志が一歩前に踏み出した。


「舞か?」


声をかけると、うずくまっていた人物がはじかれたように顔を上げた。


そしてあたしたちの顔を確認するとすぐに駆け寄ってきた。


間違いなく、舞だ。


「よかった。無事だったんだね」


「うん……!」


安堵したせいか、舞の目には涙が浮かんでいる。


「図書室ならあまり生徒たちは来ないと思って逃げ込んだの」


「そっか」


大志が慰めるように舞の頭を撫でている。


図書室の中を見回してみると、漫画喫茶のように個室になったスペースが3つほどあった。


上から覗き込まれない限り中は見えない。


さすがに内側から鍵をかけることはできないだろうけれど、逃げ込むスペースとしてはいいかもしれない。


舞はこのスペースのことを知っていたのかもしれない。


4人になったあたしたちは一度3階の空き教室へと向かった。


3階の廊下に転がっていた一の死体はすでに片付けられている。


空き教室の中は随分と荒らされていて、机や椅子がなぎ倒された状態だった。


文化祭や体育祭の道具に紛れて、あたしたちが隠れていると考えたのかもしれない。


保健室へ行く判断をしなかったらどうなったか、想像するだけで恐ろしい。


あたしたちは手分けをして散乱したおにぎりをかき集めた。


ペチャンコになっているものもあるけれど、ナイロンにくるまれているから食べられる。


学校から出られないあたしたちにとって、これは貴重な食料だ。


今日みたいに優しい職員さんに当たればいいけれど、きっとそんなにうまくいく日は続かない。
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