人権剥奪期間
「ごめんね、あたしのせいで」


「何言ってんだ。悪いのは一だ」


聡介はあのときの出来事を思い出して憎憎しげに呟く。


あたしもあの時は本当にショックだった。


まさか一があんな裏切り方をするとは思ってもいなかったから。


「とにかく、聡介はここにいるしかないな」


そう言ったのは大志だった。


聡介は無言で大志を見上げた。


「無駄に動き回って逃げても、足手まといになる」


そんな言い方はないんじゃないかと思ったけれど、事実だった。


聡介も、なにも言わない。


「今はとにかく、何か食べて体力をつけようよ」


舞がこの場を雰囲気を変えるように明るい声色で言った。


あたしは笑顔を浮かべて頷く。


特に聡介には早く怪我を治してもらいたいから、しっかり食べてもらわないといけない。


ペチャンコになったおにぎりを差し出すと、聡介は一瞬目を見開きそれから声を上げて笑った。


「形はともかく、やっぱりうまいな」


「うん。あの人たちの愛情を感じる」


しかし、そんな時間も長くは続かなかった。
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