人権剥奪期間
「あたしたちここにいて大丈夫なの?」


舞が言う。


保健室の鍵はかけているけれど、先生が開いてならそんなものは関係ない。


職員室にはすべての教室の鍵が常備されているのだから。


かといってどこに行けば安全なのかまったく検討もつかなかった。


「バラバラに逃げたほうがいい」


そう言ったのは聡介だった。


「聡介!?」


あたしは驚いて聡介を見つめる。


バラバラに逃げるということは聡介がここにひとりで残るということを意味している。


「俺のことは大丈夫だ。それに、こんなに早く足手まといになんてなりたくない」


そう言われると言葉に詰まってしまう。


「一網打尽にされたくなかったら、逃げろ!」


その言葉が舞を突き動かした。


舞は保健室の鍵を開けると廊下を確認しはじめたのだ。


「何人の先生が残っているのかわからないけど、たぶんそんなに多くはないよね。狩の時間が朝までだから明日お休みの先生だけかもしれない」


舞が早口で持論を述べる。


「でも、先生だって土日が休みだよね?」


あたしは慌てて口を挟んだ。
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