人権剥奪期間
保健室から出たあたしは数秒間その場に立ち尽くしたけれど、すぐに動き出した。


舞が言っていたように何人の先生がここに残っているのかわからない。


息を殺して周囲を確認しながら歩き出す。


保健室の隣は美術室。


その隣は化学室。


その隣は木工室。


そのすべての教室の鍵が開けられていた。


中を確認し、どの教室が隠れやすいか確認していく。


大志が言っていた『俺たちを逃がすため』という言葉がよみがえってくる。


きっとあれは当たっていたのだ。


この狩の時間を楽しくするために逃げ道を沢山用意している。


そんな風に思えてならなかった。


木工室のドアを開けたとき、大きな音がして血の気が引いた。


木工室だけ木製のドアになっていて立て付けが悪いのだ。


しかし、そこでハッと閃いた。


これだけ大きな音がすれば誰かが入ってきたときにすぐに気が付くことができる。


その間に逆側のドアから逃げ出すことができるんじゃないか?
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