セフレのテラダ
仕事終わり、南さんといつもの店に入る。

「どうなの、たまちゃんは。」

南さんは私の玉山という苗字をいじって「たまちゃん」と呼ぶ。

「いやー、何も。」
「この間の合コンは?」

ドキリとする。

「いやー、何も。」

テラダとの関係なんて言えるわけがない。

突然南さんが「はぁー」と深いため息をつく。

「何かあったんですか。」

南さんが私の方を見上げてグラスを口に運ぶ。

「いやあ〜うまく行かないよねえ。」

ワケありそうな響き。

「っていうのは・・・」

次の言葉を促す。

「うん。誰にも言わないでよ?」
「なんですか?」
「この間の合コンでさ、実はすぐ連絡来たんだよね。」
「えっ」

少しドキリとした。

「覚えてる?私と同じ年の。」

南さんと同じ年か。
少しホッとしていた。

テラダじゃない。

「誰でしたっけ。」
「もお〜たまちゃん!サカグチくんだよ〜。」

サカグチくん。
ああ、なんか居たかも。

正直全員、私にはピンときてなかった。

既婚者なのに参加してたオクヤマさんとだけ話してたんだ、私。

「正直ね、ちょっと、いいかもって思ってたとこあったの。」

南さんが話を続ける。

「彼さ、あ、サカグチくんね、結構ストレートだし、気遣いもすごいし、爽やかだし。もー全然違うなあって思っちゃって、ちょっとさ、いいなって思っちゃってたんだよね。」
「えっ。」

驚いた。

こんなに素直に後輩の私に話しちゃう?

「今の彼、全然将来も見えないし、フラフラしてるし、私のこと好きかどうかも分からないのにさ、サカグチくんは『かわいいよねー』『モテるでしょー』ってすごく言ってくれてさ。」

窓の外には見慣れた夜景。

女二人でこんな店、もったいない気もするな。

でもここは南さんお気に入りのお店だ。

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