セフレのテラダ
「ダメってどういうこと?」

私が南さんの代わりに入る。

「あの合コン、奥さんの里帰り中だったんすよ。今月初めに赤ん坊連れて奥さん戻ってきました。今、幸せ真っ最中。」

テラダが飄々と答える。

心がスゥッと冷たくなった。
隣の南さんはどうだろう。
見ることもできない。

「結婚、してたんだ。」

南さんの言葉がぼんやり宙に浮かぶ。

「既婚者オクヤマさんだけだって言ってたじゃん。」

私が言うと「俺に言われても」とテラダは頭をポリポリ掻く。

こういう口裏合わせは日常茶飯事なんだろう。

思いの外、南さんのショックが大きいと読んだのか、テラダはパッと表情を変えた。

「ま!モテる人なんてみんなそういうもんっすよ!サカグチさんなんて特に!イイ男ですもんね!何があったか分かんないですけど!ね!次何飲みます?」

空回りしたテンション。

「ごめん、これくらいで足りるかな。」

南さんはお財布から取り出したお札をテーブルの上にサッと置いた。

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