セフレのテラダ
ビルの1階ロビーに大きなクリスマスツリーが置かれていた。

隣を歩く前野さんが「クリスマスだね」と言う。

「ですね」とだけ答える。

「予定、もう決まってるよね?」

前野さんが照れた笑顔で私を見て言った。

「ああ、ですね。」

私はそう、笑いながら返した。

なんでそう答えたんだろう。
何を期待してるのか。

クリスマスの予定は全然なかった。

「じゃあ今度、都合が良ければどこか美味しいお店行きましょ。結構オススメあるんで。」

別れ際に前野さんが言う。

「ありがとうございます。じゃあ、また。」
「はい、また。」

私も前野さんも二次会には参加しなかった。
その場で分かれた。

どうしよう。

一人で歩く帰り道。

私なぜかテラダに会いたい。
< 30 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop