セフレのテラダ
昼過ぎにのんびり家を出る。

予定は何も決めてない。

「クリスマスだから混んでるかな」
「だろうね」

そんなことを言いながら、何度かコツンコツンと当たるお互いの自由奔放な手。
テラダは信号待ちの間に私の手を見つけて、しっかりと握りしめてくれた。
そして歯を見せて笑う。

裏道にある人気のカフェでパスタとケーキを注文する。

「こういう店、普段絶対入らないけどね。」

席についてすぐにテラダが言う。

「ここすごい人気なんだよ。」
「分かるけど、男一人じゃ入れないでしょ。」
「女と一緒に来ればいいじゃん。」

言ってから、あ、しまったと思う。

「だから今こうして来たんです。」

テラダがサラッと私の言葉を回収してくれる。

確かにテラダにここの雰囲気は似合わない。
その似合わなさに笑う。

「なに笑ってんの。」
「似合わな過ぎて。」
「浮いてる?俺?」

テラダも笑う。

ケーキを食べた後、ブラブラ街を歩く。

それぞれのお気に入りの店を眺めながら。
私の好きな店、テラダの好きな店。

まるで普通に付き合ってるみたいだ。

夕方近くになって、夕ご飯どうしようかなと考え始めた頃だった。

「ちょっとさー、俺行きたいところあるんだけど行っていい?」

突然のテラダの提案。

「いいよ。」

私がそう答えると「よし」と独り言のように呟いて、私の手を引いて歩き出した。

着いたのはパーキング。
前みたいに慣れたようにテラダは車を借りる。

「どこ行くの?」

私が乗りながら聞く。

「ないしょー」

テラダはそう言って発車させた。

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