セフレのテラダ
テラダの選曲はいつも違う。
私の知らない曲ばっか。

「これ夏の歌じゃん」
「いいんだよ、雰囲気雰囲気」

そう言いながら、車は高速に乗った。

今日は少し長いドライブ。
東京の景色がどんどん遠くなっていく。

どこ行くんだろう。

そう思いつつ、口に出さないでただ景色を眺めていた。

テラダが車を停める。
着いたのは公園のようだ。

「なにここ。」
「ここらへん地元でさ。」

テラダがそう言いながらシートベルトを外してドアを開ける。

私も車から降りた。

「すごい人いないんだけど。」
「まあ、ただの住宅街だからね。」

テラダはズンズンと公園に入っていく。

「あっという間に暗くなったな。」
「何すんの、ここで。」

イルミネーションがある雰囲気でもない。
人のいないただの公園。

「まあ、散歩?」
「散歩?」
「俺の地元だし。地元散策。」
「えーなんでクリスマスなのにテラダの地元なの。」
「青山歩きたかった?」
「まあね。」

そんなことを言いながら、ズンズンと歩くテラダの腕に軽く捕まる。
テラダはそんな私の手を見て、すぐにこの手を捕まえてきた。
そしてグッと上着のポケットの中に入れてくれる。

「こんなん少女漫画みたいでめっちゃ恥ずかしいけど。」

珍しく恥ずかしそうに笑う。

テラダのポケットの中。

テラダが何回かギュッとしてパッとして手のひらで話しかけてくる。

私も握り返す。

「何飲む?」

自販機の前を通りかかった時、テラダが足を止める。

「じゃあねー、コーンポタージュ。」

「スープかい。」そう言いながらテラダはコーンポタージュを買ってくれた。

そのあと、「俺はコーヒー」と言ってブラックの缶コーヒーを買う。

その時だけサラッと手を離してお互い缶を開けて、そしてすぐにテラダは私の手をポケットにしまってくれた。

それぞれのドリンクを片手にまた歩き出す。

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