セフレのテラダ
テラダがコートからはみ出てる私の指先を手に取る。
指先からテラダの体温が細く伝わってくる。

「俺、すごくサーヤが好きだよ。」

テラダが私を見ようとしてきたから、思わずテラダから視線を落とした。

テラダを信じるのが怖い自分。
テラダとの関係は刹那的で、ただ楽しめればいいと思ってるのはこの私の方だった。

何も答えられない。

今ここで「私もだよ」と言えない。
ひたすらに口をつぐむ私。

テラダがポロリと私の指先をこぼす。

「ほら、もう俺たちおしまいにしよ。」

哀しいほどの電灯の灯り。
もう他の家達は眠ってる。

こんな哀しげな夜に、さらりと一番哀しいことを言う。
言わせたのは私だ。

どこかで鳴るサイレン。
犬の鳴き声。

どこかの野良猫。

突っ立ってるテラダ。

「私まだ恋人できてないよ。」
「できるまで俺に待ってろって?」

笑顔なのに、私を突き放すように鋭く響く言葉。

テラダに歩み寄る。
テラダの頬を涙が伝う。

「なんで泣いてんの。」

人差し指でその頬を拭う。
その瞬間、くしゃくしゃに崩れるテラダの顔。

「なんでこんなに辛いんだろうな?」

テラダはそう言って苦しそうに笑う。
そして唇を噛み締めた後、また涙が頬を伝った。
テラダの顔にキレイに濡れた筋を作る。

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