愛がなくても、生きていける
それから三ヶ月後の、10月下旬。
紅葉が映える秋空に白い雲が浮かぶ、よく晴れた秋の日。
都内にある小さなチャペルで、私はパンツスーツに身を包みカメラを三脚に乗せスタンバイをしていた。
目の前には真っ白なウェディングドレスを着たあやめと、タキシード姿の侑吏さん。そしてピンク色のドレスを着ておめかしをした花乃ちゃんがいる。
というのも、あやめと旦那さんは授かり婚からお店の跡継ぎなどここ数年忙しく挙式を挙げていなかった。
そこで12月に小さな式を挙げることになったそうで、今日はその前撮りをすることになった。
「凛、ありがとうね。前撮りから当日までカメラマン引き受けてくれて」
「友達の一世一代の舞台なんだから、当たり前でしょ」
カメラの光の調節をしながら、ファインダー越しに三人を覗き込む。
真っ白なドレスを着たあやめの手元のブーケと、侑吏さんの胸元の花は、どちらもオレンジ色のマリーゴールドだ。
柔らかなオレンジ色が差し色となり、三人をあたあたかく照らしてくれるように見えた。
あやめは椅子に座ったまま、私の支度を待ちながら口を開く。
「それで、あれから大迫とはどうなったの?」
「どうも……相変わらず週1くらいで食事行くだけ、って感じ」
おやめがお膳立てをしてくれたあの日以降も、私と大迫の関係は大きくは変わっていない。
定期的に会って食事をして……ほんの時々、彼の家に泊まる。
だけどキス以上はなく、ただ抱きしめ合うだけの夜を過ごしている。
そんな話を聞いて、あやめはじれったそうに言う。