ちいさなことばをひろいあつめて【短編集】
 差し出したグラスに並々とワインを注がれ私は思わず噴き出した。


 「あなた、やっぱり変わってないわね」

 「変わるも何も俺は昔からこうだよ」

 「折角のワインが勿体無い」

 「安物だ。飲めればいいさ」


 そう言って彼は手酌でマグカップに並々と注ぎ入れて一口啜る。

 安物といっても一本一万円するワインだ。

 もう少し味わって飲めばいいのに彼はぐいぐいと飲んでマグを空けた。

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