ちいさなことばをひろいあつめて【短編集】
 「じゃあこれだけは頂くわ」

 「そうしてくれ」


 ほんの少しだけ彼は笑うと私はもう一度グラスいっぱいのワインを煽る。
 
 そして飲みきるとだいぶ酔いの回った体を起こして玄関へと向かった。

 履き慣れたパンプスを履いて玄関先に置いていたトランクを持つとドアノブに触れる。

 後ろに彼の気配は無い。

 私はゆっくり振り向き


 「人生足別離」


 それだけ言って玄関を出た。
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