ちいさなことばをひろいあつめて【短編集】
 「…もう見えるか」



 そう言って少女は右目に掛った眼帯を外した。


 ゆっくりと閉じていた右の瞼を持ち上げる。

 すると朝日に劣らぬほど明るく輝く金色の瞳が現れた。

 瞳が輝きを増すと同時に彼女の眼前に白く大きな樹の映像が投影される。


 白い樹を見る。

 幹から広がる枝の部分が紫色に光っていた。



 「『イェソド(基礎)』…、やっと到達しましたね」

 「まだ一つ上っただけか」

 「ですがお嬢様は最短で登られました。流石はオーディン様の左目から生まれ落ちたお方―――」

 「言うな」


 青年の讃える言葉を遮ると少女はフルーレを薙いで彼の首筋に細い刀身を宛がった。
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