ちいさなことばをひろいあつめて【短編集】
 報道から1ヵ月、毎日垂れ流される太陽衝突のニュースで知る限りは、例え宇宙に逃げたとしても地球は木端微塵。帰る場所など無く半永久に宇宙漂流だ。


 宇宙船の積載量を考えれば1年も絶たない内に餓死か酸欠で死ぬだろう。

 それでも宇宙に逃げるというのは今回の件みたく俺たちに知らせられてないだけで火星あたりでテラフォーミングが済んだから、なのかもしれない。


 そんな空想じみた考えを巡らせていると俺の隣に彼女が座る。

 二人掛けの安物ソファが小さく軋んだ。


「アップルパイ、焼けたけどどう?」

「ああ、もらう」

「バニラアイスは?」

「つけて」
 

 彼女の言葉に答えると早速準備に取り掛かってくれた。

 キッチンで物音がし始めると甘く香ばしい香りが一足先にリビングにやってくる。


 ああ、今日のアップルパイも美味しそうだ。

 香りだけでも今日の出来栄えが分かり楽しみが増す。


 彼女とアップルパイの登場に気持ちが逸るのを感じながらぼんやりテレビを眺めていると彼女の声が聞こえた。
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